大王わさび農場
実写(ライセンス済み)Namemiso / CC BY-SA 4.0

長野中部・安曇野No.739★★地図で見る →

大王わさび農場

food穴場——実はすごい

安曇野の扇状地にあるわさび農場。北アルプスの雪解け水が湧き出し、黒い寒冷紗をかけた砂利の畝を流れていく。園内は無料で歩けて、いちばん奥の川では木の水車が三つ回っている。

  1. 起点松本駅
  2. 約30分JR大糸線+徒歩かタクシー
  3. 降車穂高駅(JR大糸線)
  4. そこから
  5. 大王わさび農場

狙い目

隠れた場所ではない。安曇野を一日で回るときの定点で、運営側自身がこの眺めを「安曇野の原風景」と呼んでいる。それでも見に行く価値があるのは、ここが読める土地だからだと思う。水が来て、分けられて、仕事をして、出ていく。その順番を三十分ほどの徒歩で追える場所は、そう多くない。早い時間に歩き始めるほど、その順番ははっきり見える。

場所

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見どころ(歩く順)

蓼川の三連水車Sei F / CC BY-SA 2.0
  1. わさび田掘り下げた地面に立つ砂の畝。そのわきを一年中13度から15度の湧水が流れていく
  2. 蓼川の三連水車二つの川が合わさるところで回る三つの木の水車。撮影隊が置いていった風景
  3. 大王神社園内の小さな社。農場の名の由来になった八面大王をまつる
  4. 大王窟・開運洞八面大王が朝廷軍との最後の戦いに立てこもった有明山の洞窟を、園内に再現したもの
  5. 親水広場湧水が浅く流れ、手を入れられる岸辺。散策路のいちばん静かな側にある

実際の行き方

  1. 松本駅→穂高駅(JR大糸線)。
  2. 穂高駅から東へ、扇状地を横切って歩く。駅前からタクシーでもいい。
  3. まず畝のあいだの小道へ。光が低いうちがいい。
  4. 蓼川をたどって三連水車まで行き、大王神社と洞を回って戻る。
JR大糸線で穂高へ
松本からJR大糸線を北へ、穂高駅で降りる。安曇野観光の拠点駅で、特急も停まる。農場は駅から東へ2.3キロほど、扇状地を横切る形になる。歩けば三十分ほど、駅前からタクシーなら十分ほどだ。
穂高駅・松本へ戻る
行きと同じ道を戻る。大糸線は単線のローカル線で、昼間と夕方は列車の間隔が開く。歩き出す前に帰りの一本を決めておきたい。タクシーは穂高駅には待っているが農場前には常駐しないので、乗るなら現地で呼ぶことになる。
現在地からの経路を開く(Google マップ)↗

どんな場所か

農場は安曇野の扇状地におよそ15ヘクタール。その大半は、動いている水だ。北アルプスに降った雪が扇状地の砂利に潜り、ここで地表へ戻ってくる。栽培は平地式と呼ばれる方式で、川の近くの平らな土地を数メートル掘り下げ、伏流水の湧き出る高さに砂で畝を立て、その畝の両側にわさびを植えていく。真夏の直射日光には耐えないので、畝の上は寒冷紗や植えた木で日を遮る。だから遠目には、緑の畑というより暗いコーデュロイの布地に見える。畝のあいだの小道を歩くと、低く均された音がずっと続く。ポンプではなく高低差だけで水を配っている畑の音だ。畝の向こうを流れる蓼川は、水草が流れに寝ているのが見えるほど澄んでいる。

おすすめの楽しみ方

暖かい季節の開場は八時。この広さの施設としては早く、その早さは使う価値がある。日はまだ低く、水面に乗るというより水面を横から走り、畝は日陰を保っている。畑だけでなく水車と洞まで回るなら、一時間は見ておきたい。水の表情がいちばんいいのは春から初夏、畝の向こうにアルプスがくっきり立つのは秋だ。名物はわさびのソフトクリームで、これは字面より確実にうまい。

歴史・背景

1915年、初代はこの扇状地の湧水に目をつけ、五つの町村にまたがる地主と交渉して二年がかりで土地をまとめた。当時は砂利ばかりの荒地で、ほかに使い道がなかった。開拓に入ったのが1917年の三月、最後の畑が仕上がったのが1935年。およそ二十年である。国に認められたのはずっとあとで、1985年の環境庁・名水百選に安曇野わさび田湧水群が入った。川の水車だけは筋が違う。黒沢明が1990年公開の映画の一編、水車のある村の場面のために建てたもので、撮影隊が引き上げたあともそのまま残された。

行く前に

現金
園内に入るのは無料。売店と食事処は通常どおり有料で、季節によって値も変わるから、事前に見た金額は目安として扱いたい。小さな売り場のために現金を少し持っておくといい。
行く前に
開場は3月から11月が8時から17時、12月から2月が9時から16時。休みは12月31日。冬はここも日が短く、風はアルプスからまっすぐ下りてくる。畝のあいだの道は砂利で日陰がないので、夏に要るのは上着ではなく帽子だ。
別ルート
車なら長野自動車道の安曇野インターから十分ほどで、駐車場は園内にある。もうひとつの定番はレンタサイクルで、安曇野は平らだし、わさび田と川のあいだの道は車が少ない。
降りたあと
穂高駅からの道は東へ、開けた農地のなかをまっすぐ進む。背中にはずっとアルプスがある。起伏はなく、最後は川沿いになる。ただし日陰がまったくない。八月にタクシーを勧める理由はそこだ。