山口西・川棚No.426★★地図で見る →
瓦そば
〜瓦で焼く山口の茶そば〜
緑の茶そばが熱い瓦に出会った町。川棚温泉は山陰本線の海沿いから少し内陸へ入ったところにある小さな湯の町で、旅館と食事処が、いまも自分たちの生んだ一皿を出している。

瓦そばは、瓦を器にして組み立てられた料理だ。ぱちぱちと音を立てるまで熱した瓦に緑の茶そばを広げ、錦糸卵と甘辛く煮た牛肉をのせる。温かいつゆに浸して食べ、上に添えたレモンともみじおろしで、食べ進むうちに味が変わっていく。瓦に触れた麺は香ばしく焼け、その上の麺はやわらかいまま残る。この段差こそが仕掛けの本体である。考え出されたのは山陰の海に近い湯の町、川棚温泉。旅館の名物として生まれた一皿は、そこから山口じゅうへ広がり、家庭の食卓にも学校の給食にも届いた。
なぜ穴場のままか
瓦そばは隠れた料理ではない。山口じゅうの店にあり、県の外にもある。川棚温泉も看板の立った小さな観光地だ。この町にあるのは料理の文脈のほうで、瓦と旅館と、そもそも宣伝したかった湯とが、歩ける範囲にひとまとまりで残っている。列車で来れば、あとは支線の速度が間をつくってくれる。
歴史・背景
湯そのものは古い。青い龍が現れたという言い伝えが残り、江戸の頃には毛利家の殿様が通い、ずっと下ってピアニストのアルフレッド・コルトーも滞在した。麺のほうははるかに新しい。1961年、この町の旅館の主人が「何か名物を」と考えあぐね、古老から聞いた話を思い出す。1877年の西南戦争で、熊本城を囲んだ薩摩の兵が瓦を火にかけ、肉や野草を焼いて食べたという話だった。彼は瓦に茶そばを広げた。町は、名前のついた一皿を手に入れた。
見どころ(歩く順)

- 温泉街の通り
- 旅館と食事処が肩を寄せる短い通り。瓦そばを出す店が集まる
- ぴーすふる青竜泉
- 町の日帰り入浴施設。町の始まりになった湯元のすぐそばに立つ
- 青龍権現社
- 湯の始まりを語る青龍伝説を伝える、道端の小さな社
- 妙青寺
- 温泉街の南の端に立つ寺。種田山頭火の句碑がある
おすすめの楽しみ方
狙うのは昼だ。瓦は音を立てて運ばれてくるし、店の呼吸も夜より昼にできている。食べてから湯に入るとよい。熱くて重い料理は、湯のあとより湯の前のほうが収まりがいい。レモンは終わりのほうで搾る。同じ皿の最後が、最初とは違う味になる。
実際の行き方
- 下関駅→幡生→川棚温泉駅(JR山陽本線・山陰本線、約40分)。
- 川棚温泉駅→温泉街(内陸へ約1.8キロ、徒歩20分ほど)。
- 昼のうちに、通りの店か旅館で瓦そばを食べる。
- 湯元の共同浴場と社へ寄り、南の端の妙青寺まで歩く。
- JR山陰本線・下関から
- 下関駅→(JR山陽本線で幡生、山陰本線に乗り継ぎ)→川棚温泉駅、およそ40分。この区間は本数が多くない。着いたらまず帰りの時刻を確かめておきたい。
- 川棚温泉駅から戻る
- 道を下って駅へ戻り、山陰本線で幡生・下関方面へ。駅は無人で券売機だけ、日中は列車の間隔も開く。昼食のあとではなく、着いた時点で時刻表を読んでおくほうが安全だ。
行く前に
- 現金
- 町を歩き、社に寄るだけなら料金はかからない。日帰り入浴には入浴料がいる。小さな町で駅も無人だから、カードをあてにせず現金を持っておくほうが確実だ。
- 定休
- 食事処は昼を中心に動いていて、営業の合間に閉める店も多い。午後遅くに着くとシャッターに出会うことがある。駅から町までは普通の道で、日陰も雨よけもない。冬の山陰は風が強い。
- 別ルート
- バスは下関駅からのほか、海沿いの二見・室津方面からも川棚温泉に入る。下関からのバスは列車よりかなり時間がかかる。車なら中国自動車道の小月インターチェンジか下関インターチェンジから。
- 降りたあと
- 川棚温泉駅から東へ、内陸に約1.8キロ。道なりに徒歩20分ほどで温泉街に入る。駅前にはタクシーも待っている。